就職氷河期世代、賃上げから取り残される?
- 迪宇 坂本
- 3月15日
- 読了時間: 11分
求人広告合同会社の広告コンサルタンです。
「春闘」の報道があり、また氷河期世代が取り残されている
そう感じるのは、私だけでしょうか?
以下、考察していきたいと思います。

就職氷河期世代の定義と近年の賃上げの背景
就職氷河期世代とは、一般的に1990年代初頭のバブル経済崩壊後の深刻な景気低迷期から2000年代半ばにかけて、学校を卒業し就職活動を行った世代を指します。
2025年現在、主に40歳から55歳頃に該当するこの世代は 、卒業時に安定した正社員の職を見つけることが困難であり、非正規雇用でキャリアをスタートせざるを得なかった人が多く存在します。
第二次ベビーブームによって、人口ボリュームが大きかったことも、この世代の就職難をさらに悪化させる要因となりました。就職氷河期という言葉は、単なる過去の出来事を指すのではなく、この世代のキャリア形成、経済的安定に根本的な影響を与えた時代を表しています。
この世代の人口規模が大きいことは、彼らの経済状況が、社会全体に与える影響も大きいことを意味します。
近年、日本経済においては賃上げの動きが見られます。
2024年の平均賃上げ率は約5%と報告されており、2025年もこの傾向が続くと予想されています。
この賃上げの背景には、物価上昇・労働力不足、そして政府からの賃上げ要請といった要因が挙げられます。しかし、大企業と中小企業の間で賃上げの状況には差が見られることも指摘されています。この賃上げの波が、かつて就職で困難を経験した、就職氷河期世代にどのように影響しているのか?
特に、非正規雇用で働く人々に、恩恵が及んでいるのか? は重要な問いです。
歴史的に、不利な状況に置かれてきた人々にとって、今回の賃上げが経済的課題を解決する機会となるのか?
それとも、新たな格差を生むのかを検証する必要があります。
2. 失われた世代:就職氷河期の実態
就職氷河期は、1990年代から、2000年代にかけての日本経済の構造的な変化によって、引き起こされました。バブル経済の崩壊は、企業の採用意欲を著しく低下させ 、新卒採用数は大幅に減少しました。
この時期に卒業を迎えた若者たちは、高い失業率、そして厳しい求人状況に直面しました。
企業は、コスト削減のため、正社員採用を抑制し、パートタイム・契約社員・派遣社員といった非正規雇用の割合を増やしました。就職氷河期は、一時的な景気変動ではなく、日本労働市場における構造的な変化であり、この時期にキャリアをスタートさせた世代を不安定な雇用状況へと追い込みました。
この初期の不利な状況は、その後の彼らのキャリア形成に長期的な影響を与えていきます。
就職氷河期に、正規雇用を得られなかった就職氷河期世代は、他の世代と比較して、非正規雇用の割合が高い状態が続いています。非正規雇用は、一般的に正規雇用よりも平均賃金が低く、生涯賃金にも大きな差が生じます。
また、非正規雇用ではキャリアアップや、スキル開発の機会も限られていることが多く、その後の正規雇用への移行も困難な場合が見られます。
このような状況は、結婚や家族形成、長期的な資産形成にも影響を与え、将来的に社会保障への依存を高める可能性も指摘されています。就職氷河期という初期の挫折は、この世代にとって、累積的な不利となり、現在の経済状況だけでなく、長期的な経済的安定と生活の質全般に影響を及ぼしています。
早期のキャリアの不安定さが、富を築き、専門的に成長する機会を阻害してきた、とも言えるのではないでしょうか。
3. 日本の現在の賃上げの状況
2024年から2025年にかけて、日本全体で賃上げの傾向が顕著になっています。
2024年には、30年ぶりとなる高い水準(平均約5%)の賃上げが報告されました。
2025年もこの流れは継続すると見込まれており 、長らく停滞していた日本の賃金動向に大きな変化が見られます。この現在の状況は、様々な層が抱える経済的課題に対処するための、潜在的な機会を提供しています。
この賃上げの背景には、物価上昇と生活費の増加 、様々な産業における労働力不足の深刻化、そして政府による賃上げへの働きかけと圧力といった要因が、複合的に作用しています。
一部の企業では、収益性の改善も見られ、それが賃上げを後押しする要因となっています。インフレ圧力、逼迫した労働市場、政府の奨励策が重なり合うことで、日本は特異な賃上げ環境を迎えています。
しかし、これらの賃上げが持続可能であるか? そして、その恩恵が広範囲に及ぶのか? については、さらなる検証が必要です。
企業規模別に見ると、大企業が賃上げを主導する傾向が見られますが、一方で、中小企業は収益性の制約から、大幅な賃上げを実施する上で、より多くの課題に直面している可能性があります。
また、産業別に見ても、賃上げの幅には「ばらつき」があり、鉄鋼や製造業では高い賃上げ率が報告されている一方で、サービス業や特定の課題に直面している産業では、賃上げ幅が小さい可能性があります。
この賃上げの傾向は均一ではなく、大企業や好業績の特定の産業で働く人々の方が、中小企業や苦戦している産業で働く人々よりも、大きな恩恵を受けている可能性があります。この格差は、既存の不平等をさらに悪化させる可能性があります。
4. 賃上げ格差と就職氷河期世代
賃上げの恩恵が、正規雇用者と非正規雇用者の間で、どのように分配されているか? について注目する必要があります。
正規雇用者は、一般的に雇用が安定しており、福利厚生も充実していますが、今回の賃上げが彼らに集中する場合、非正規雇用で働く就職氷河期世代の状況は改善されない可能性があります。
一部の産業では、非正規雇用者の賃上げも報告されていますが、その幅や継続性については、検証が必要です。最低賃金の引き上げは、非正規雇用で働く低賃金労働者にとって、一定の効果があるものの、最低賃金以上の賃金で働く人々にとっては、大幅な改善には繋がらない可能性があります。
「同一労働同一賃金」の原則は、正規雇用者と非正規雇用者の間に生まれる、不合理な賃金格差を解消することを目的としていますが、この政策が就職氷河期世代に、どの程度効果を発揮しているかについても注視する必要があります。
就職氷河期世代には、非正規雇用で働く人の割合が高いため、今回の賃上げの恩恵が彼らに十分に行き渡るかどうかが重要です。もし、賃上げが正規雇用者に偏る場合、このグループの不利な状況がさらに悪化する可能性があります。
就職氷河期世代の中でも、年齢層によって、賃上げの状況に差が生じている可能性があります。
企業は、将来性のある若い世代の労働者を引きつけ、定着させるために、より重点的に賃上げを行っているかもしれません。一方で、この世代の中堅層や高齢層は、同程度の賃上げを享受できていない可能性も考えられます。
就職氷河期に、非正規雇用を長く経験してきた人々にとっては、経済的安定を取り戻すために、大幅な賃上げが必要となる場合があります。就職氷河期世代内における年齢別の賃上げ格差を分析することは、的を絞った対策を講じる上で重要です。
企業が、若手人材の確保に重点を置く場合、就職氷河期に苦労した中高年の労働者は、現在の賃上げの波から取り残される可能性があります。
表1:世代別賃上げ率の比較(仮説)
世代 | 2024年平均賃上げ率(%) | 2025年予測平均賃上げ率(%) | 正規雇用 | 非正規雇用 | 若年層 | 中堅層 | 高齢層 |
バブル世代 | 5.5 | 5.2 | 5.7 | 4.8 | - | 5.5 | 5.3 |
就職氷河期世代 | 4.8 | 4.5 | 5.0 | 4.0 | 5.2 | 4.5 | 4.3 |
ミレニアル世代 | 5.3 | 5.0 | 5.5 | 4.7 | 5.8 | 5.2 | - |
Z世代 | 5.8 | 5.5 | 6.0 | 5.2 | 6.0 | - | - |
(注:この表は、公開されている情報に基づいて作成された仮説であり、実際のデータを反映したものではありません。)
5. 就職氷河期世代における新たな課題
現在の賃上げの波が、安定した高収入の仕事に就いている人と、非正規雇用や低賃金労働に甘んじている人々の間で、さらに所得格差を広げる可能性があります。賃上げの恩恵を受ける人とそうでない人の間で、「二極化」が進むリスクも考えられます。
特に、非正規雇用で働く就職氷河期世代が、今回の賃上げから十分な恩恵を受けられない場合、既存の経済的不平等がさらに悪化し、新たな社会問題を引き起こす可能性があります。
就職氷河期の影響による低い生涯賃金は、年金受給額の低下や、老後資金の不足につながる可能性があります。
現在の賃上げが不十分な場合、彼らが老後のために十分な貯蓄を蓄えることは、さらに困難になるでしょう。
その結果、老後に社会保障や、公的扶助への依存が高まる可能性も考えられます。就職氷河期世代は、そのキャリア形成の過程で、すでに潜在的な老後の課題を抱えています。現在の賃上げから取り残されることは、老後の経済的安定をさらに脅かし、社会保障制度への負担を増大させる可能性があります。
見過ごされたり、取り残されたりする感覚は、労働意欲の低下や、エンゲージメントの低下につながる可能性があります。もしこの世代の大部分が賃上げを経験しなければ、消費支出の減少につながる可能性もあります。
経済格差が不公平だと認識された場合、社会の結束が弱まり、社会不安が増大する可能性も否定できません。労働人口の大部分を経済的恩恵から排除することは、個人の経済的幸福だけでなく、経済活動全体や、社会の安定にも広範な悪影響を及ぼす可能性があります。
6. 政府および企業の取り組み
政府は、就職氷河期世代の雇用とキャリア開発を支援するため、様々なプログラムを実施しています。
これらのプログラムの中には、非正規雇用労働者の正規雇用への転換を促進するものもあります。しかし、これらの対策が、この世代が直面する根深い経済的不利を解消する上で、どの程度効果的であるかについては、慎重な評価が必要です。
問題の規模を考えると、より包括的で、的を絞った介入が必要となる可能性があります。
政府は、就職氷河期世代が抱える課題を認識し、様々な支援策を講じていますが、これらの措置が、初期の就職難によって生じた、長期的な経済的不利を、完全には解消できていない可能性も指摘されています。
企業は、従業員の定着と、エンゲージメントを高めるための取り組みを強化しています。従業員のエンゲージメントとウェルビーイングに関連する、その具体的なイニシアチブも実施されています。
しかし、これらの努力が、特に異なるニーズや、優先順位を持つ可能性のある「非正規雇用」の就職氷河期世代特有の状況に対処するために、特別に調整されているかどうかは不明です。
企業は、従業員の定着とエンゲージメントの重要性をますます認識しており、様々な戦略を実施しています。しかし、これらの一般的なアプローチが、非正規雇用で、長年キャリアを積んできた可能性のある、就職氷河期世代の特有の課題に十分に対応しているかは疑問です。
7. 提言と政策的含意
賃金格差に対処するための政策提言として、「同一労働同一賃金」の原則を強化し、その規制と執行を徹底することで、就職氷河期世代に多く見られる、非正規雇用労働者が公正な報酬を受けられるようにする必要があります。
特に、中小企業に対して、非正規雇用者を含むすべての従業員に、より実質的な賃上げを提供するよう奨励するためのインセンティブ(補助金や税制優遇など)を導入することも有効です。
非正規雇用の、就職氷河期世代の賃金を大幅に引き上げた企業に対して、『的を絞った賃金補助金や税制上の優遇措置を提供すること』も検討すべきです。
また、就職氷河期世代を含む、経験豊富な労働者の長期的な貢献を考慮した、公正な賃金慣行に関する業界全体の合意や、ガイドラインを推進することも重要です。
キャリアアップの機会を強化するための提言として、就職氷河期世代の再就職と、スキルアップを支援し、より高収入の仕事への移行を促進するために、特別に設計された再教育およびスキルアッププログラムへのアクセスを拡大し、改善する必要があります。
この世代の非正規雇用労働者が、正規雇用に移行するため、より多くの経路と支援システムを創設することも重要です。
企業に対して、採用慣行を見直し、非伝統的なキャリアパスを持つ可能性のある、就職氷河期世代の貴重な経験とスキルを考慮するよう、働きかけることも必要です。
長期的な経済安定のための政策的含意として、労働力の大部分を賃上げから排除することによる長期的な経済的影響、例えば、消費支出の減少や、社会福祉費の潜在的な増加に対処する必要があります。
就職氷河期世代が、高齢期に近づくにつれて、彼らの経済的幸福に対する、持続的な支援とモニタリングの必要性を認識することも重要です。重大な経済格差が持続する場合、世代間の公平性と社会の結束への影響も考慮する必要があります。
8. 結論:分析の要約と的を絞った解決策の必要性の強調
本記事では、就職氷河期世代が、過去に経験した不利な状況を再確認しました。
近年の賃上げの波から、彼らが取り残される可能性についての分析をまとめ、特に、所得格差の拡大、老後の経済的安定に関する新たな課題を強調しました。
この世代が経済成長の恩恵を受け、長期的な経済的安定を達成するためには、的を絞った政策介入と、企業の責任が不可欠であることを改めて表明します。
この重要な人口層を完全に統合し、支援することによって、社会全体に、将来的に利益があることは否めません。
Comentários